「会話のボキャブラリー」を増やすための負け確定バトル

こんにちは、ライターの齋藤です。
ワーク・シフトラボ ベーシック講座の第2回の潜入レポートをお届けします。

前回は、意識的対話をテーマに2つのことを学びました。1つは、ゲートキーパーの技を意識的対話を使って引き出すこと、もう1つは、狂人との意識的対話をすることを学びました。
今回は3人の狂人の方々を相手に、意識的対話を実践するためインタビューをしてきました。

さながら、負け確定のイベントバトル

最初に、第2回がどんな流れだったのかを紹介します。

まず3人のグループに分かれて、13分間のインタビューを狂人の方に行います。
その結果を元に、2分間で誰かに狂人を売り込む企画を考えます。

受講生どうしてプレゼンテーションを行い、プレゼンが終わったら全員でインタビューからプレゼンまでの流れを振り返ります。

 

ここまでなら、普通の起業家育成イベントのようなものですが、ワーク・シフトラボは一味違います。

最後に、インタビューを受けた狂人の方から「インタビューはどうだったか?」と「プレゼンの内容はどうだったか?」を直接フィードバックしてもらいます。

前回使用した「ヒーローインタビュー」という聞く力をトレーニングする研修ゲームを、より辛辣にした特別バージョンを使いました。

前回使用した「ヒーローインタビュー」という聞く力をトレーニングする研修ゲームを、より辛辣にした特別バージョンを使いました。

 

結果は、ボロボロ
狂人の方へのインタビューの内容から企画へつなげることが難しかったし、何より狂人の方が「これはやってみたい!」と思える企画が作れませんでした。

すごく真剣に話しているようで「またいつもの話か」と思っていたそうです

すごく真剣に話しているようで「またいつもの話か」と思っていたそうです

とはいえ、今回は短い時間のインタビューだけ。
なので、本当に「いい企画」を作るには圧倒的に時間が足りません。

どちらかと言うと、テレビゲームで序盤によくある「絶対勝てないバトル」のようなものでした。
ではなぜ、僕たちは「絶対勝てないバトル」をしたのでしょうか。

 

自分の会話のパターンを自覚することで、うまくいかない瞬間を体験する

私たちは普段、特に難しいことなく人と会話しています。
そこには無意識に自分にとって「得意な会話のパターン」が存在しています。

意識的対話は、相手から言葉を引き出す技術です。もし、今の自分が「得意な会話のパターン」と相手の「話しやすい会話のパターン」がマッチしたら、その会話はとても盛り上がります。
しかし得意な会話のパターンがマッチしない相手が現れたら、その会話で引き出せる話は一気に減ってしまいます。

今回は、意図的に時間を短くすることで僕達の「会話のパターン」が出てくるようにしていたように感じます。

真剣な顔しているようで、得意技が効かず頭の中が真っ白になってる筆者です。

真剣な顔しているようで、得意技が効かず頭の中が真っ白になってる筆者です。

 

僕は人の持っている情報には深さがあると思っています。
浅い部分は「外向きに答えるように準備された情報」で、深い部分は「心の奥にあって言語化がされていない情報」という具合に何段にも分かれていると思っています。

浅い部分の情報は理解しやすい一方で、理解しやすくするために本意ではないように変換されている可能性が高い情報です。

そのため、浅い情報だけしか持っていないと、誤解すれ違いが発生しやすくなってしまいます。
逆に深い部分の情報は、理解するのは難しいですが一度理解できると浅い情報にまどわされないようになります。

僕は、インタビューの基本は、浅い情報から始まって深い情報へともぐっていくこと、と考えています。
ところが、狂人の方にインタビューをしてみると、浅い情報でも例えばこんな具合な話が出てきます。

狂人1人目 メンヘラ.jpを運営しているこやまさん

狂人1人目 メンヘラ.jpを運営しているこやまさん

メンヘラの人たちが集まるネット上のコミュニティ「メンヘラ.jp」を運営している小山さん。とにかくこのサイトは大変だから一刻も早くやめたい、と言う一方でサイトを続けている

謎だ。

 

狂人2人目 アナログボードゲームを作っている石神さん

狂人2人目 アナログボードゲームを作っている石神さん

いろいろなアナログボードゲームを作っている「ゲーミフィジャパン」のいしがみさん。人の話を聞いていると、カードゲームができてしまう、らしい。

よくわからない。

 

仮面屋さん

仮面屋さん

曳舟で日本唯一の仮面専門店「仮面屋おもて」を運営しており、舞踏家でもある大川原さん。仮面屋をするのは舞踏の一種らしい。

注:舞踏…踊りを踊ること(大辞林)

わけがわからない。

 

こんな風に、狂人の方の語ることは浅い情報の時点ですでに理解するのが難しい。
そのため深い情報にたどり着くキッカケが全然見えないのです。
普段、なにげなく使っている自分の会話のパターンでは成り立たない会話があることを嫌ほど実感しました。

インタビュー待ちの間、とっても楽しそうな狂人の方々。

インタビュー待ちの間、とっても楽しそうな狂人の方々。

 

会話の流れのボキャブラリーを増やすことが重要

ライターという仕事は、インタビューをすることも大切な仕事のひとつです。
人の話を聞いて、まだ言葉になっていないことを言葉にして書くこと。
僕もこれまで何十人という人たちにインタビューをしてきました。

第2回の最後に思ったのは、僕のインタビューは今まで「自分の得意な会話のパターンに持っていっていた」ということです。

自分が話を聞きやすい流れを作ること。

 

これもちろんインタビューの重要な技術ですが、それだけでは通用しない瞬間があることを今回知りました。
(逆に言うと、今までうまくいかなかったインタビューはそこができていなかった、のかもしれません)

ひとつひとつの言葉のボキャブラリーではなく、会話の流れのボキャブラリーを増やすことでもっと深い情報を聞き出すことができるのです。
そのためのヒントは、前回習ったとおり、ゲートキーパー同士が意識的対話を通じて「どういう引き出し方をしているのか」を知ることにあります。

受講生どうしでの振り返りも、会話のボキャブラリーを増やすチャンスでした。

受講生どうしでの振り返りも、会話のボキャブラリーを増やすチャンスでした。

 

例えば今回教えてもらったのは、
「相手の言葉の中の矛盾を見つけて、そこを深い情報の入口にすること」
「自分の専門外の分野の話で深い情報にたどり着くのはとても難しい、ということ」
などです。

この会話のボキャブラリーを多く持っていると、さまざまな狂人の方の話を引き出すことができる。
それは巡りめぐって、自分の作る事業の幅をひろげることにつながると思いました。

 

さて、次回は自分の中の「狂人性を司る狼因子」に迫ります。
講師の広瀬さんから、
「齋藤は、ゲートキーパーっぽいんだけど、時々狂人になるからなぁ。」
と言われている私。いったいどんな事になるのでしょうか。

お楽しみに!

公開済みのベーシック講座のレポートはこちら

第1回
【「学ぶ技術を学ぶ」狂人と付き合う基本的技術を学ぶ】

第3回
【狂人を理解するために、狂人になってみる】

第4回
【ゲートキーパー版パターン・ランゲージを通じて、自分の成長ポイントを発見する】